その他

ゴシック体か?明朝体か?どちらがいいの?という話について

2018年11月1日

今回の記事はWordSlack-#designで議論されている「Twenty Nineteen」の日本語フォントについて、私の考えをまとめたものです。
個別に作成するテーマやウェブサイト全般に対する話ではありませんのでご注意ください。

私の好みだけで言えば「Noto Sans!いいじゃん!これがスタンダードだと面白いよね(興味本位)」で良いのだけどね。もはや職業病かもしれませんが「こうあるべきでは?」という考えもあって、好みだけで突き進めないとこが、デザインでご飯が食べれている理由なのかもしれません。


さて、結論を書いてしまうと、
Gutenbergがserifならテーマもserif
Gutenbergがsans-serifならテーマもsans-serif
で余計なことをしない

というのが私の意見です。

書体の選定にはテーマ自体のコンセプトに従うほうが良いのでは?

以前WordSlack-#designで、疑問に思ったことを質問してみました。

blv.tomoya [10月20日 14:54]
突然な話ですが、ご存知の方がいらっしゃったら教えて頂きたいのですが、Twenty Nineteenのデザインコンセプトってなんなんでしょう。
いろいろ、理由はあるんでしょうけど、Gutenbergのデモテーマ的な役割になるんでしょうか?
なぜ、わざわざ新しいテーマを作ろうとしてるのか、先日の何のフォントをつかったらいいのか?という話題にからんで、ふと疑問になりまして。
選定にはテーマ自体のコンセプトに従うことが一番重要なように思います。


mimi
どなたも発言なさらないみたいなので僭越ながら・・・
先にシンヤさんが引用されている

Introducing Twenty Nineteen


にとあるのでおっしゃる通り、
> Gutenbergのデモテーマ的な役割
なのではないでしょうか。


shinichin
そうですね。昔のデフォルトテーマは「テーマの作り方を伝えるためのもの」という感じでしたが、最近(20XXという名前のシリーズ)は「WordPressでできることの最大値を見せていく」みたいな雰囲気があります。
ポストフォーマットのときは2012(だったかな?)が、いろんな投稿フォーマットにこだわって作っていたりしました。

不躾な質問で不快に思われなかったと、後になってドキドキでしたが、mimiさんとshinichinさんから回答をいただけて、とてもありがたかったです。


Twenty NineteenのデザインコンセプトにGutenbergのデモテーマ的な役割があるのだったら、テーマ側で書体を変えてしまうのは良くないように思います。Gutenbergで編集したものが、そのまま反映されるという体験を大切にしたいのであれば、パブリッシュの結果、書体が変わってしまうというのはGutenbergの機能をアピールする上で(書体が変わると見た目が大きく変わってしまうので)マイナスになるように思います。
ですので、GutenbergとTwenty Nineteenは別々に考えるのではなく、セットで考えることが必要なように思います。
そして現在、いろんなやりとりを眺めてみたのですが、GutenbergとTwenty Nineteenの関係はうまくいっているよう思えません。
理由はどうあれ、公式のテーマからGutenbergに書体の指定を入れることが公式に登録するルール上NGなのであれば「Gutenbergがserifならテーマもserif。Gutenbergがsans-serifならテーマもsans-serif」といったようにGutenbergにあわせる形が一番のように思います。

冒頭に結論を述べたくせに・・・一方で

「日本人にあわせてTwenty Nineteenはゴシック体を選ぶ」といった考えも持っています。
その場合はウェブフォントや他にも色々選べることができるように思いますが、その場合でも指定は「sans-serif」とシンプルなもので良いように思っています。

日本のサイトでゴシック体の指定が多い謎

なぜゴシック体がウェブでは多いのか?ということを考える際、今だけではなく過去も含めて考えてみる必要があります。
ちょっと長話になりますが昔話をしたいと思います。
「昔話が得意になってくると老害化の始まり」という名言がありますが(友人語録)、回顧主義的な話でなければ良しとしてもらえればと。


2000年〜
フォントの指定に関して議論が熱くなってきたのは、記憶の中では2000年とか2001年くらいからだったと思います。(そういえばWeb Designingの創刊号でも文字に関して特集されてましたね。)
当時、よく指摘されていたものとして「解像度が低くて明朝体だと文字が潰れたりギザギザが目立って可読性が落ちる」というものがありました。
当時も今と変わらずいろんな方が試行錯誤されていましたし、その結果「ゴシック体」がよく選ばれるようになっていました。情報誌や勉強会などでも「ゴシック体(sans-serif)」の指定はマスト!といった感じで、そんな状態が8年から10年ほどダラダラと続いてきた中、CSS3とHTML5の登場!
そしてiPhoneです。
この辺りから、状況が変わってきたように感じます。
とはいえ、高解像度のモニターなんて少数派でしたし、ブラウザー側の問題もあってゴシック体(sans-serif)の指定が日常的に使われていました。


が!ここからが、早い早い!
2011年頃から一気に状況が変わってきます。
気がつけば「高解像度は当たり前」
気がつけば「ウェブフォントも選択肢が増えたし使えるレベル」
になってきたという感じ。
現在に至っては、表示に関してゴシック体でも明朝体でも、それほど問題ではなくなってきました。
実際に明朝体を使用する事例も増えてきています。


ということで技術的な問題からいえばゴシック体であろうが明朝体であろうがどちらでも良い問題だと私は思います。
強いて言えば「長年慣れ親しんだゴシック体のほうが違和感がない」
ちなみにですが、ウェブデザインという職業?が世にで始めた頃、エディトリアルデザインの一部の重鎮たちは「なぜ明朝体が使えないんだ!なぜこんなにも明朝体が汚いんだ!ウェブのデザインは悪だな!」みたいなことをおっしゃっていましたね(15年くらい前かなー肩書きにウェブデザイナーって書いてたらウェブデザイナーなんてデザイナーじゃないって名刺その場で捨てられましたよ・・・)。まあそういった恨み言は置いて置いて、文化や常識が違えば見方も違うわけで、エディトリアルからすれば明朝体ガーガーガーは重要かもしれませんが、ウェブにおいては(これまでは選択肢としてよくなかったんだから)それは常識ではないですし、さらに書体の選定という面では、例えば丸ゴシックなんかは、ひと昔前までは、本文組に使う書体ではない!って思われてたんですよ。今ではどうでしょう?丸ゴシックが本文組に使われても、文句なんてほとんで出てこない。
その時々の文化や慣れ親しんだ環境が一番なんです。
ウェブはゴシック体に何年も慣れ親しんでるんだから、違和感を少なくするという点で、私ならゴシック体を選びます。
 

OSのフォントレンダリングエンジンに差がある

前置きとして「CSSの指定が云々・・・Windowsで游ゴシックのウェイトの名称が・・・」といった話ではなく、OS自体の話。

Appleは、わずかなぼやけの犠牲を払っても可能な限り活字のデザインを保つことであると考えています。
マイクロソフトは、ぼやけを防ぎ、可読性を向上させるために、各文字の形状をピクセル境界に打ち込む必要があると考えています。
引用 https://www.joelonsoftware.com/2007/06/12/font-smoothing-anti-aliasing-and-sub-pixel-rendering/

上記の記事が正しいなら、Appleとマイクロソフトとではフォントレンダリングエンジンに関して考え方に違いあります。
昨今の「Windowsのフォント表示が汚い」問題の元凶はこのレンダリングエンジンの設計にあり、いつまでも解決しない問題のように思います。
そういったことを考えるとメイリオはマイクロソフトのフォントレンダリングエンジンの考えを汲み取ってつくられたものですので、表示や読みやすさを考えると選択肢の一つとしてあがってくるのは当然なのでは?と考えてしまいます。そこには美しさという以外の価値観が存在します。そりゃ意見が交差するわな。


書体美しさについて
文字の形やその趣などは、熟練された書体デザイナーが仕上げたものだけあって、細かな所に様々な工夫がしてあり、餅は餅屋のついたものが一番うまい!よろしく一流の専門家が制作したものですから、そこは信用しても良いのではないでしょうか?
まあ不安でしたら直接お話を伺いにいくのもよいでしょうし、昔と違ってその手の検証や議論は調べれば出てきます。
またメイリオに関しては美しさの点に置いては疑問は残るものの(マイクロソフトのフォントレンダリングエンジン自体が活字のデザインを保つこを目的としていない)設計という点を考えると理にかなっていると思います。
そのため単に「美しくない」というだけでは切る理由にはならないと思うのです。
美しさと機能を兼ね備えていれば良いですが、その間にOSの設計思想もありますので一筋縄ではいきません。

デザインって何?

公式やコアに関わるものに関しては、余計なものを付け足さないということも大事だと思います。
昔の人は良く言ったもので「蛇足」は必要ないんです。
フォントの指定に関しての議論は重要です。
しかし、現状この問題は個々のテーマ開発で解決できる部分ですし、その選択肢を公式のテーマであたかも「答え」のように実装するのは良いことなんでしょうか・・・。
今思うとウェブチップスの野原さんと懇親会で「CMS側で書体を考慮する必要はあるのかないのか」で少しだけ口論になったことがありますが、今思うと見当違いな議論だったなと反省しています。
うん。CMS側で書体を考慮する必要はないね。
考慮する必要はないは言い過ぎかもしれませんが、考えるべき側はデザイナーであったり、個々案件で対応するればいいことでCMSのすることじゃない。

長々と理屈を述べましたが…

以上が
Gutenbergがserifならテーマもserif
Gutenbergがsans-serifならテーマもsans-serif
で余計なことをしない

という考えに至った経緯です。
そしてここまで、長々と書いておきながらですが、考えは変わることもあります。
良いと思えばその方法や考えに変えれば良いのです。
ですので、とりあえず、今の考えの結論としてと思っていただければと。


にしてもNoto Sans、いろんな意味で良い書体やわー。

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